2011年2月3日木曜日

チュートリアル

今日は AusCTW2011 の最終日。一般講演はなく,チュートリアルが午前と午後 1 件ずつあるのみ。両方とも聴講してきた。

午前中の 1 件目は,NICTA (National ICT Australia) の Dr. Leif Hanlen による

Wireless Body-Area-Networks: a wearable intranet

なる講演。これは自分の研究テーマというより,学生向けのテーマとして将来的に可能性があるかなぁ?なんてことを思ったんで,技術動向を把握することを目的に聞いてきた。技術的にどんなことが要求されるか,とか標準化の動向なんかは大体わかったけれども,小規模なラボで学生向けの適切なテーマが設定できるかどうかは,現時点では何とも言えない,という感じ。ただ,早ければ来年の前半には体や衣服に装着する小型無線機器が市場に出るだろうってことなんで,そうなると,何か面白いことができるかなぁ,くらいしか今は言えない。

午後は,UCLA の Dr. Lara Dolecek による
 
High-Performance Graph-Based Codes
 
なるレクチャー。基本的に LDPC 符号の話。前半は LDPC の基礎。後半は absorbing set の解析とその応用に関する話。LDPC の復号誤り率においてエラーフロアが生じる問題の原因として,タナーグラフ上のビット反転では改善できない absorbing set というビットノードの集合を考えて,そのトポロジカルな構造や誤り率との関係について理論的な考察を与えたという話。また,その結果として,エラーフロアの回避や,誤り率が極めて低い場合の特性解析に要する計算時間を軽減する方法などが紹介された。
 
個人的にはこっちの話の方が面白かったし,今の自分の研究テーマに即座に関連はしないかもしれないけれども,いずれ必要になることがあるかもしれない。

今回の会議は,自分の研究を前に進める上で大きな収穫はなかったけれども,自分の発表でも,すごく食いついてくる人も何人かいて,それなりの手ごたえはあった。今回のネタは,完全相補系列を使った原画像非参照型の電子透かしの話題。ポスターの最後の方で,ちょっとだけ,この研究で提案している方式と以前提案した CT-CDMA という通信方式の類似性について言及した部分があった。で,聴きに来た人の一人が,どうやら僕の CT-CDMA の論文を読んだことがあるらしく,これについて詳しく訊いてきた。通信方式としてはあまりスジの良い方法ではないんだけれども,単一の符号で多くの情報をオーバーラップして伝送できる,という特性が,電子透かしにおいて 1 つのメディアに同時に多くの秘密情報を埋め込むことに利用できる。さすが,一度読んだことがあるだけあって,
 
キャパシティを増やすには,系列長を大きくしなくてもいいのか?
 
とか,いきなり核心に触れるようなことを訊いてきた。で,

  • 系列長ではなく,符号を連接するときのインターバルが重要
  • 系列長が短くても埋め込む情報量は増やすことはできるが,
    符号の種類が豊富に取れないので,セキュリティ上問題

みたいなことを説明すると,

OK! Good! Interesting!

とか言って去って行った…これまで会ったことのない人だったけど…ひょっとして論文の査読者だったりして…


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