2010年11月16日火曜日

アジアの秘宝

昨夜,Cinema Nova で映画を観た。

中国の巨匠チャン・イーモウの新作。しかも,コーエン兄弟のマスターピース『ブラッド・シンプル』のリメイクときたもんだ。

タイトルは "A Woman, a Gun and a Noodle Shop" という。

タイトルだけだとこの 2 作は全然結びつかない。いや,リメイクということを知らなければ,物語の終盤か映画を観終わるまで気がつかないかもしれない。

そもそも,コーエン兄弟とチャン・イーモウという組み合わせが,少なくとも僕の中では全く結びつかない。だからこの映画のことを知った時にも,チャン・イーモウがコーエン兄弟のテイストをなぞるようなことは恐らくしないだろうし,できないだろうと予想していた。

その予想は正しかった。が,ある意味大きく裏切られもした。そうですか…こう来ましたか…という…

チャン・イーモウは時間的・空間的設定を大きく変えるだけでなく,作品のテイストそのものもエキセントリックなまでに飛躍させて見せた。まさに換骨奪胎。リメイクという先入観なしに観たら,もっと楽しめただろう。事実,物語の途中では,これが『ブラッド・シンプル』であることを一瞬忘れて,爆笑したりしてしまった…恐らく中国のコメディアンが出演しているんだろうと思われるが,これ,コントじゃん,というシークエンスも少なくない…

我々と中国人の笑いのツボが微妙に違うこともあるんだろうが,これはオリジナルの『ブラッド・シンプル』とは全く別物だ。ただ,残虐性,ラスト近くのシークエンスでのサスペンス,そこかしこに埋めこまれたコミカルな要素…こう考えてみると正しいリメイクのような気もしてくる。ただ,各要素のさじ加減は大きく違う。原作にあったような背筋が凍るようなスリルよりは,笑いの要素が大幅に増幅されている。それ自体が悪いとは言わないが,僕の原作に対する愛が深すぎて,この作品を冷静に見られなかったのかもしれない。

ただ,失礼を承知で言うが,主演の Ni Yan が微妙に美女のストライクど真ん中を外しているあたりは,オリジナルのフランシス・マクドーマンドを思わせてナイス(かさねがさね,失礼 m(. .)m)。それに,チャン・イーモウにこんな引き出しがあったことも、やはり驚きではある。

その意味で,問題作であることに疑いはないし,必見。ただ,頭の中を空っぽにできるかどうかで,傑作にも珍品にもなるんだろう…ご注意あれ。

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