2010年7月23日金曜日

MIFF #01

メルボルン国際映画祭が開幕しました。今日から映画を見た日はそのレポートをここに綴ります。

"The Illusionist" @Greater Union 3

Greater Union はメルボルンでも少し古いタイプのシネマコンプレックスです。日本でも歌舞伎町辺りにあった映画館をイメージすると近いかも。全部で 6 個のスクリーンがあります。

この映画祭,僕が最初に観た映画は "The Illusionist" というアニメーション作品です。1959年パリ,キャバレーでマジックを披露する芸人一人。ドジ踏んでクビになってパリを後にし,海を渡ってロンドンへ…。ロンドンでは,人気絶頂のロックバンドの後にステージに上がるも,客はほとんどいない。流れ流れて,スコットランドの安宿でマジックを披露する日々。そこで働く住み込みの少女だけが楽しんでくれる…

とまぁ,時代に取り残された芸人噺としては良くあるタイプのストーリー。ただ,この作品,何が特別かって,脚本がジャック・タチ。彼の映画化されなかった脚本をアニメ化したのがこの作品です。主人公のマジシャンは,顔はともかく動きはタチ演じる伯父さんそのもの! モーションキャプチャーしたんじゃないかってくらい。ところどころに差し込まれる笑いのセンスも往年のタチ映画を彷彿とさせてくれる。「ぼくの伯父さん」なんかでは犬が良く出てくるけれど,この作品ではマジックに使うウサギが主人公(ユロ氏って言っちゃっていいのか?)の相棒。ただ,ストーリーがストーリーだけに全体のトーンがもの寂しい感じだけれど…

3D とかいって騒いでいるこの時代に手描きのアニメでこういうテーマの作品を作るってあたりがまたノスタルジーを掻き立てて泣かせるじゃないスか。しかも,単にアニメ化したってだけじゃない,カメラワーク(っていうのかな? アニメの場合)もひと捻りしているところがあるし,タチのオリジナル脚本をどの程度脚色しているのかわからないけれど,実写じゃキツいだろうなぁという描写や動きも多い。こういうとこはアニメーションならでは。アニメだからこそ描けるエキセントリックなギャグなんかもあって,笑いながら「うまいねぇ」と唸ってしまいました。

そういう意味では,埋もれたスクリプトを生き返らせるにはこの手があったかと思わせる作品,アニメーションでこそ描くべきお手本のような作品だと思いますね。近頃,何でこれアニメじゃなきゃいけないの? 的作品も多いので,そういう意味でも,貴重だと思います。

でも,ラストはちょっとカッコ良すぎるんじゃ??

The Illusionist
(2010 年 / フランス=イギリス / 80 分 / アニメーション)
監督・脚色:Sylvain Chomet
オリジナル脚本:Jacques Tati

★★★★★★★☆☆☆

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